山梨にある町立赤石温泉診療所。東京にある大学病院の内科医・小石三郎(橋爪功)は、縁あってこの温泉にある診療所にしばらく身を置くことになった。ここにいるのは看護師の新山さゆり(西尾まり)と研修医の黒川淳史(蟹江一平)。無医村状態の村には他に病院も医師もなく、村人のほとんどがこの診療所と新たにやって来てくれた小石の存在を頼もしく思うのだった。
そんなある日のこと。村に刑務所帰りの男が戻ってきたとの噂が小石の耳に入ってきた。男の名前は鴨下治郎(吉見一豊)。15年前、大学生だった頃に恩師の高品教授(立川三貴)を殺害し、殺人罪で13年服役していたという。しかし、実は鴨下は当初から犯行を否認しており、服役中ずっと無実を訴えてきたのだった。そして無実を勝ち取る執念は出所してきた今も変わらず、再審請求を出しているのだとも。
その後小石は、鴨下が身を寄せる、同級生・山野辺晴夫(緒方幹太)、幸代(長谷川真弓)夫婦が経営する温泉の浴場で彼と出会った。
すると鴨下は小石を医師と知った上でDNA鑑定について問い掛け、「13年前の血痕で個人の識別が可能なのか?」と尋ねてきたのだ。
この時、小石は関わることを嫌ってか、ほどほどの返事をしてその場を後にした。だがその翌日、鴨下が何者かによって橋から突き落とされ、意識不明の状態に陥ったとの知らせを聞いた直後、小石の考えは変わった。 事件のことを聞き駆け付けてきた光洋新聞の記者・水島貴美子(筒井真理子)から鴨下が刑務所で書いた手記『ぎりぎり水』を見せられたのだ。 そこには、当時、新聞社の文学賞を受賞し前途揚々だった若者が、13年間無実の罪で自由を失い、大事な時間をフイにした無念が切々とつづられていた。本当に無実でなければ書くことのできない入魂の手記。
小石は”無実を証明”できるかもしれない、鴨下を罪に追い込んだという殺人現場に残されたO型の血痕について再調査を開始。まず行ったDNA鑑定の結果、現場にあった血液は鴨下のものではないことを証明した。 新聞に躍る冤罪を伝える記事。しかし、相変わらず意識の戻らない鴨下を見舞い、やりきれない思いを抱く小石。だが、この時、小石やさゆり、そして黒川や貴美子の中に持ち上がったのは、”鴨下が犯人でなければ真犯人は誰なのか?また鴨下を橋から落とした犯人は誰?”という思いだった。そこで、小石らは再び13年前の事件をひも解いてみることにした。
すると、事件当夜、現場となった高品教授邸には鴨下の他に五人の同級生たちがいたことが分かった。
旅館を経営する山野辺夫妻。高校教師となった藤木敏也(増田由紀夫)。父の精密機器会社で働く・徳永輝一(草薙仁)。そして小説家となった三田千尋(渋谷琴乃)。犯人はこの中にいる!?
小石らは、血痕を落とした真犯人を突き止めるため、順次五人を訪ねた。
<原作>由良三郎
<脚本>田辺 満
<企画>荒井昭博/熊谷剛
<プロデューサー>赤司学文/石川好弘
<演出>長尾啓司
<出演>橋爪 功/西尾まり/蟹江一平/尾美としのり/筒井真理子/長谷川真弓/渋谷琴乃/吉見一豊/緒形幹太/山本耕一 ほか